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おしゃべり散歩道2018

息づく円谷さんの精神

 涼やかな風に金木犀の甘い香りが漂った9月下旬、福島県須賀川市にある円谷幸吉メモリアルホールを訪ねました。1964年の東京五輪マラソンで銅メダルに輝いた円谷さん。その4年後のメキシコ五輪も期待されましたが「もうすっかり疲れ切ってしまって走れません」という遺書を遺して自殺した悲劇を忘れることが出来ません。
 ホールに入ると、大きな写真に迎えられ、銅メダルやシューズ、ユニフォームなどの展示物からは、円谷さんの息づかいが聞こえてくるようでした。練習日誌や手紙も展示されていますが、丁寧にきちんと書かれた文字に真面目な性格がうかがえます。
 そんな中で、三島由紀夫さんの言葉が印象的でした。当時は、発作的な自殺、力不足が原因などと報道されていたようです。それを三島さんは「生きている人間の思い上がりの醜さは許しがたい」と。そして「美しい自尊心による死」と表現していたのです。当時、日本の期待を一身に背負っていた円谷さんを感じることが出来た貴重な時間でした。
 そしてその精神はしっかりと受け継がれています。ホールでスポーツ少年団「円谷ランナーズ」を指導する安藤昭人さんとお会いしました。「子ども達、円谷さんのような強い選手になりたいと、がんばっていますよ」と安藤さん。その中には、県下一の駅伝強豪校、学法石川高校に進む選手も。学校を訪ね、監督の松田和宏さんにもお会い出来ました。選手たちは走る前に体幹トレーニングを約20分行い、脚に負担の少ないクロスカントリーコースで練習を重ねていました。「ケガをさせないことを第一に考えています」と松田さん。こんな風景に円谷さんは、天国で目を細めていることでしょう。

(共同通信/2018年10月1日配信)

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