トラックの女王の挑戦
今夏の北海道マラソン(8月26日)に、鈴木亜由子さん(日本郵政グループ)が出場することが発表されました。初マラソンです。’15年北京世界陸上選手権、’16年リオデジャネイロ五輪、’17年ロンドン世界陸上選手権には、1万m等のトラック種目で出場。スピード際立つ亜由子さんが、満を持してのマラソン挑戦です。でも「鈴木の集中力なら、来年3月の名古屋ウィメンズでもよかった」と高橋昌彦監督は話します。
というのも、亜由子さんは春に右足の甲を故障したこともあり、監督は焦らずにじっくりマラソンに出場させたかったようです。ただ本人からすれば、2020年東京五輪マラソン出場をかけたマラソングランドチャンピオンシップ(’19年9月)までに少しでも多くの経験を積んでおきたかったのでしょう。しかも、人一倍暑さに強い亜由子さんなのです。
6月の日本陸上競技選手権女子1万mでは、残り約2000mからロングスパートしたもののラスト1周で松田瑞生さん(ダイハツ)に抜かれ2位に。私は亜由子さんのご両親と一緒に観ていました。ゴール後、両親のもとにやってきた亜由子さんに「足は痛くない?痛かったら監督さんに言わんといけんよ」と母親の由美子さん。「そうも言っとられん」と視線を合わすことなく、すぐに両親の前から離れる亜由子さん。こんなやり取りをみていて、胸が苦しくなりました。この日もそうですが、足の痛みが全くない日はないのでしょう。でも東京五輪は「マラソンでいく」と覚悟を決めた以上、少し位の痛みは気にしないという感じなのです。「痛みに強いからね、亜由子は」と由美子さんも見守る感じ。2020年へ、亜由子さんは戦いの旅に出ました。
(共同通信/2018年7月13日配信)
|