指導は横から目線で
日大アメリカンフットボールでは監督の勝利至上主義による倫理観が問われました。またレスリングでは、巣立った選手に対する嫌がらせなど陰湿な事件が起きました。今、スポーツの世界の不祥事は目に余ります。一つの理由が、昔あった師弟関係を望まない選手が増えているからだと思います。指導者がそれを押し付けるようだと選手は反発するでしょう。
マラソンの世界でも川内優輝さんや設楽悠太さんは、上から押し付けられる指導を嫌います。川内さんは監督を持たず、自らが監督であり選手。1980年代、中村清さんとの師弟関係で強くなった瀬古利彦さんに「監督なしでは無理」と何年も前から言われ続けてきたのに、自分流を貫き通しています。そして今春は、ボストンマラソンで瀬古さん以来31年ぶりに日本人優勝を果たすなど大活躍。また今年の東京マラソンで16年ぶりに日本記録を出した設楽さんも、自分流で競技する人。ホンダチームに所属しているものの、小川智コーチが上からではなく、横から目線でアドバイスしているのです。
指導者や先輩が恐怖で支配し「やらせる」ような軍隊的古い指導法では、選手は自分で考えることを放棄してしまいます。自らが考え工夫し、成長していくことが出来る選手を作ることが指導者の役目ではないでしょうか。
そんなことを考える折しも、NHKニュースで前橋市の中学生硬式野球チームの練習の様子が紹介されました。中学生が自分たちで練習メニューを考え、反省会でお互いに指摘し合い、話し合って試合のレギュラー選手や打順を決めている。監督は横から見守り、必要な時だけアドバイス。感動しました。上から目線よりも「横から目線」が大事です。
(共同通信/2018年6月18日配信)
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