設楽さんの偉業達成に
2月25日に開催された東京マラソンで、日本陸上長距離界に春一番が吹きました。設楽悠太さん(26歳・ホンダ)が、16年ぶりに日本記録を塗り替えるという偉業を達成。私はスタジオで解説しましたが、胸が熱くなる場面が多くて何度も涙がこぼれました。
第2集団で走っていた設楽さんをペースメーカーとして第1集団まで運んだのは、村山紘太さん(旭化成)。大学時代からのライバルで、彼の上手なペースメイクのお陰で12km地点で先頭集団に追いつきました。その後も設楽さんは冷静にリズムを刻み、日本人トップの2位に。
40km地点、ボトルを取って給水した設楽さんは、そこにゴムで巻かれた自分の似顔絵入りのメッセージを腕に着けてゴールまで。それは家族からのものでした。普通はゴールに近づくほど、少しでも身を軽くしたいと思うもの。でも設楽さんはいつも支えてくれる温かいご家族と一緒に走りたかったのでしょう。
何度か設楽さんとお会いしていますが、とても優しい人です。今回も本番2日前の記者会見の囲み取材で、「小ネタ、面白いですね」と言われました。それから私が喜びそうなことを頭の中で考えている様子。で、「今、甘いものを我慢しているんです。バレンタインデーの時に貰ったチョコが部屋に沢山あります。レースが終わって食べるのが楽しみです」と、笑顔で話してくれました。前にも、「自分に走る楽しさを教えてくれたのは、川音順子先生です」と伺いました。川音さんは、埼玉県寄居町にある町立男衾(おぶすま)中学校陸上部の先生。小さな公立中学ですが、箱根駅伝ランナーを15人輩出しているのです。強くて優しい設楽さんの春一番に、これからたくさんの花が咲きそうです。
(共同通信/2018年2月26日配信)
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