5年間耐えた重友さん
5年という長い冬を土の中で過ごし、春のタンポポが力強く花を咲かせました。1月29日の大阪国際女子マラソンで重友梨佐さん(29歳・天満屋)が2012年以来5年ぶりの優勝。ゴール後にスタンドで見守るお母さんの民恵さんと目が合い、ニッコリ笑いました。
レースはハーフを1時間12分から12分30秒と、多くの選手が余裕を持って走れるペースに設定されましたが、ペースメーカーが序盤スロー過ぎて、途中で急にペースアップ。それについていったのが堀江美里さん(ノーリツ)、加藤岬さん(九電工)、吉田香織さん(チームR×L)の3人でした。重友さんは冷静に自分のペースを守り、先頭集団から離れていったのです。
しかし後半、遅れてくる選手を次々に抜き、35km過ぎには先頭を走っていた堀江さんも一気に抜き去り、そのまま優勝。3年後に向けて勢いのある若手ランナーが登場する中、経験にものをいわせた、ザ・マラソンというレースを見せてくれました。
レース前、重友さんは「今が分岐点。大会後は色々考えるかもしれない」と話していました。後輩の小原怜さんや前田穂南さんが力を付ける中、しばらく結果を残せていなかった重友さんは背水の陣で臨んだことも勝因の一つかもしれません。武冨豊総監督は「練習量が足りなかった分、前半抑え目に走ったことが幸いした」と分析します。
ロンドン五輪女子マラソンの日本代表だった重友さんですが、レース前に足を痛めて練習が出来ず、結果は78位。そこから立ち上がってきたのです。この夏の世界陸上選手権は因縁の場所ロンドン。忘れ物を取りに行けそうです。臥薪嘗胆という言葉がふさわしい重友さんのこれからが楽しみです。
(共同通信/2017年1月30日配信)
|