悔しさバネに羽ばたく年に
「このままでは終われない」と、静かに話した小原怜さん(天満屋)。12月22日、山陽女子ロードレースの記者会見でのことでしたが、その表情には内に秘めた闘志が感じられました。そして翌日のレース(ハーフマラソン)では、加藤岬さん(九電工)や岩出玲亜さん(ノーリツ)らと先頭集団を作り、8キロ手前でスパート。地元岡山の大声援を受け、ゴールまでトップを譲ることなく走り切って優勝したのです。前半の10kmよりも後半の10kmが20秒以上速いタイムで、内容も申し分のないものでした。
小原さんは今年3月の名古屋ウィメンズマラソンで、わずか1秒差でリオ五輪の代表を逃しました。代表を決め、喜びが弾けた田中智美さん(第一生命グループ)に対して、崩れ落ちる小原さんの姿は気の毒でした。勝負の厳しさを感じた方も多いでしょう。その後、気持ちを切り替えて1万mでリオを目指しましたが、思ったような走りができず。夏の合宿ではその悔しさを練習にぶつけたに違いありません。秋の駅伝シーズンから好調だったのです。
この日、笑顔の優勝インタビューも終わり、緊張の糸が解けた小原さん。「スタート直前に、総監督に言われたことが悔しくて」と打ち明けてくれました。武冨豊さんから「ここで勝てなかったらマラソンでまた負けちゃうぞ」と言われたそうです。それで奮起したそうです。
教育的には褒めて伸ばすことが一般的ですが、選手の性格によっては叱咤激励型も。経験を重ね自立した選手になれば指導者とぶつかることもある中、多少反発するような気概を持ってこそ強くなるのだと思います。
来年は酉年。悔しさに涙をのんできた小原さんが、大きく羽ばたきそうです。
(共同通信/2016年12月26日配信)
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