心に響く言葉で指導
どの競技でも華のある指導者はいますが、陸上長距離界で風穴を空けるような活躍をしているのが青山学院大学の原晋さんです。お会いする度に「陸上界は10年経っても変わっていないね」と問題意識を語ります。11月上旬、全日本大学駅伝でご一緒した時に原さんの指導の原点が褒め上手であること、サービス精神が旺盛であることに気付きました。これはメディアによく登場する名伯楽の小出義雄さん(有森裕子さんや鈴木博美さん、高橋尚子さんなどを育てた)と共通しています。小出さんも「テレビや新聞に注目してもらってはじめて陸上人気が高まり、子供たちも陸上やってみようかなと思うんだよ」と話すのです。
これまで「ワクワク大作戦」など、大会毎にチームのテーマを掲げてきた原さんに、テレビ局が今回も面白い作戦名をリクエストすると「エビフライ大作戦!」と。スタート地点の名古屋名物を挙げて盛り上げたのです。「一番美味しい頭の部分を最後に残し、そこまで身の詰まったプリプリの海老が最後にカラッと揚がるようなレースをするよ」と話すと、スタジオでゲスト解説をしていた神野大地さん(青山学院OB)が「分かりにくいですね」と恩師にツッコミ。その後2人はあれこれ話し、最後に「君はゲストの神でもあるね」と原さん。
アンカーでは一色恭志さんが快走し、優勝のゴールテープを切りました。一色さんがまだ1年生の時、私が原さんに彼のことを伺うと、「瀬古利彦さん以来の天才。偉大なマラソンランナーになるでしょうね」と話したことを思い出します。短い言葉で、選手の心に響くような言霊を残してくれる指導者なのです。4年後の東京五輪が楽しみになります。
(共同通信/2016年11月21日配信)
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