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おしゃべり散歩道2016

上原さん、あっぱれの走り

 リオデジャネイロのコパカバーナ海岸沿いをジョギングしていると、ポン・ジ・アス−カル(砂糖パンと呼ばれる世界遺産の岩山)が微笑んでいるように見えました。
 女子5000m予選で上原美幸さんがあっぱれの走り。この種目はマラソン以上に世界の層が厚く、予選を通過するのが大変なのです。レース前に、鹿児島から応援に来ていた美幸さんのお母さんにお会いすることが出来ました。とても明るい方で、「どうせ手も足も出ないんだから、野獣のように走ってほしい」とお母さん。私が「そうですよね、カーニバルの街ですから」と返すと、サンバっぽい踊りで応えてくれたのです。
 さて、レース。スタートはフライングがあり、やり直し。長距離種目のフライングは失格にはなりませんが、珍しいこと。その犯人は上原さんでした。それだけやる気満々だったのでしょう。彼女はスタート直後に飛び出すと2位以下を100m以上引き離し、3600mまで先頭を譲らず。集団に追いつかれてからも驚異の粘りを見せました。5番手あたりで踏みとどまり、ペースが落ちると再び先頭へ。その後も先頭集団の中で走り続け、ラスト1周でアフリカ勢に置いていかれたものの、7位でゴール。大物感漂う走りで日本選手としては20年ぶりの決勝進出を決めたのです。解説していて私は胸が熱くなりました。
 決勝でも序盤積極的に先頭に立ち、いいペースで引っ張りました。最後はケニアのチェルヨトさんらのアフリカ勢に歯が立たなかったものの、20歳の上原さんにとってこれ程の経験はありません。「東京五輪はマラソンでメダルを獲りたい」と、大きな目を輝かせる上原さん。“薩摩おごじょ”の今後が楽しみです。

(共同通信/2016年8月21日配信)

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