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おしゃべり散歩道2003

心機一転の渋井さん

 髪を黒く染め直した渋ちゃんこと渋井陽子さん(三井住友海上)が、旧中山道を快走しました。文化の日、駅伝シーズン到来を告げる東日本実業団女子駅伝が埼玉で開催。彼女はエース区間の3区を走って4年連続区間賞、チームも4連覇の偉業を成し遂げました。
 「心機一転です!」。黒髪のことを尋ねたわたしに、彼女は笑って大きな目をいたずらっぽく輝かせました。パリの世界陸上以来の再会。あのときは、女子1万メートル決勝で思うような走りができなかったのです。
 ボーイフレンドの末次慎吾選手に会うまで涙をこらえていたのに、彼の顔を見た途端に泣いてしまいました。「泣くな、泣くな…」と頭をなでられる渋ちゃんの何とかわいかったことでしょう。
 どうやらパリの後、心に火が付いたようです。以前は「競技はアテネまで」と言っていたのに、最近は「北京がピークですよ」。その2008年北京五輪で、まだ29歳。前々から鈴木秀夫監督が「本気でやり始めたら誰もかなわないよ」と話しているだけに、これからが本当に楽しみです。
 それにしても「後輩パワーです」と渋ちゃんが言うように、このチームはルーキーを1区やアンカーによく起用します。4連覇の今回も、アンカーは新人の岩元千明さんでしたが、普通は怖くてできないことです。駅伝の、胸が張り裂けるような緊張感とゴールテープを切る喜びを、1年目から味わわせたいという監督の思惑でしょう。
 ゴール後の記者会見。6選手のうち、岩元さんだけが区間2位で区間賞を逃したことを知った渋ちゃんは、わざと低い声で「なにー」。もちろん口元は緩んでいました。こんな楽しい雰囲気も、後輩たちが伸び伸びと育つゆえんでしょう。

(共同通信/2003年11月12日配信)

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