「夢伝」で教えられたこと
伊豆七島の八丈島で「夢伝(ゆめでん)」を―。この願いがついにかない、10月19日に「第1回八丈島夢伝大会」が青空の下、開催されました。
島のチョンコメ(方言でかわいい子牛の意)作業所で働く障害のある人たちをはじめ、島の皆さん約300人が参加。1周4キロのコースを思い思いに、そして、にぎやかに走り切りました。
夢伝は、わたしが大会本部長を務める障害者中心のマラソン大会です。「駅伝は競争だけど、夢伝は一人ひとりが自分なりのペースで、自分なりのゴールへ向かえばいいね」。地域福祉研究会「ゆきわりそう」代表の姥山寛代さんと、こんな趣旨で始めました。
これまで、夢伝”発祥の地”の群馬県松井田町で11回、みどりの日に皇居で開催する大会は7回を数えます。伊豆七島では噴火による被災前の三宅島で1回行いました。
今回の八丈島。海風に揺れる赤いハイビスカスを見ながら「やっぱり近くに海があるっていいなあ」と感じました。わたしたちは、八丈小島を前にして左手に海、右手に八丈富士を眺めながら走りました。
車いすの部に参加した肢体不自由の4歳の女の子。彼女は、島民による八丈島太鼓が聞こえてきたラスト400メートルで「歩きたい」と言いました。しかし、体幹部分の筋肉が脆弱(ぜいじゃく)なため、立って体を支えることは難しい。
伴走者とわたしは、彼女を車いすから降ろし、2人で両側から肩を抱き、腰をしっかり支えました。
呼吸を合わせてリズムをつくり、ゆっくり歩く。最初は難しかったけれど、歩調は次第に合ってきました。ほほ笑む彼女の表情に、腕のしびれを忘れました。
それぞれの、人の「大切な一歩」を教えられた一日でした。
(共同通信/2003年10月29日配信)
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