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おしゃべり散歩道2003

元気を取り戻せる島

 あくせくした毎日でも「落ち着いたら○○に行こう」と思うと、口元が緩んでファイトがわいてくる―。そんな場所ってありますか? わたしにとってのそれは、香川県・小豆島の内海町です。
 オリーブの生産に力を入れる内海町は、壺井栄さんの小説「二十四の瞳」の舞台としても有名です。主人公の大石先生が自転車で通った「岬の分教場」は、今もそのままで瀬戸内海を見つめています。わたしは、心がカサカサしてしまったときにそこへ立つと、元気を取り戻せるのです。
 この夏、そこで開催された「栄学校」からお招きを受け、子どもたちの前で「スポーツっていいね」というテーマでお話ししました。ちょうど、水泳の世界選手権で北島康介選手が金メダルに輝いた後だったので、彼の話が中心になりました。
 北島選手は少年のころから世界を見据えていましたが、それは母親の影響が強かったようです。記録帳をつけていた母親は、彼が地区大会で地区記録をつくって優勝すると、そのタイムの横に日本記録を記入。日本記録を樹立すると、今度は世界記録を記しました。目標に向かってたゆまぬ努力。わたしなんか、日本記録をつくった時点で大満足でした…。
 栄学校では、1948年から9年間、実際に岬の分教場で教えていた池田嘉代子さんが授業をしてくれます。80歳をとうに過ぎた今でも、とてもかわいらしく英知に富んだ方です。小説が52年に出版されたことからも、わたしは池田先生こそ「大石先生」のモデルではないかしら?と思えて仕方ありません。
 壺井栄文学館の館長を務める佐々木正夫さんや、岬の分教場で学んだ大森喜代治さんらにも再会でき、心ウキウキ。小説の中にいるような、幸せな気持ちになれるのです。

(共同通信/2003年9月10日配信)

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