「金」目指す千葉さん
「大阪(国際女子マラソン)と比べて調子は2倍いいよ」と朗らかに話すのは小出義雄さん(佐倉アスリートクラブ)。間近に迫った世界陸上へ向けて、米国のボルダーで高地合宿を行う千葉真子さんのことです。彼女自身も「目指すは金メダルです!」とキッパリ。
ボルダーではQちゃん(高橋尚子)とともに生活。長距離走は一緒に行う日も多いようです。2年前、千葉さんが小出さんの門をたたいたときは、30キロ走をQちゃんと走っても、5キロもするおいていかれ、Qちゃんが豆粒のように見えなくなってしまったそうです。でも今は、「いい勝負をするよ。千葉ちゃんの足が前とは全然違うからね」と小出さんは得意げに話すのです。
これまで唯一の悩みが食事の量でした。千葉さんは決して、食べられないのではなく、常に”少なめに少なめに”を意識していたのです。2年前、ボルダーを取材で訪れた時も、鳥肉をレタスの下に隠した彼女に、「千葉ちゃーん」と小出さんは笑いながらレタスをおはしでめくりあげるのでした。それが、今は朝、昼、晩にしっかり食べ、「食べて良い筋肉をつくる」ことを自然に学んだようです。
それにしても「大阪と比べて2倍いい」なんて何と頼もしい。あの時だって、最後の2.195キロを誰よりも速く走り、わたしはあの底力に彼女の競技歴が表れていると思ったものです。1996年アトランタ五輪1万メートルで5位、97年アテネ世界選手権1万メートルで銅メダル。将来を嘱望されましたが、その後はけがの連続。2001年1月、旭化成を退社しました。
栄光から挫折を味わうと、ゼロからの再出発は切りにくいものです。声も明るく苦悩を見せたがらない千葉さんですが、はんなりとした雰囲気の中に、「京おんな」のシンの強さが、かいま見られます。
(共同通信/2003年8月13日配信)
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