「裸」強いられる潔白証明
ギリシャで誕生したオリンピックは、最初、男だけのものだった。全裸で競技したのは「全身全霊を競技にささげます」といった感じだったのだろう。
今、選手は、ドーピング検査のために人前で「裸」をさらすことを強いられている。
検査対象は、その協議会の上位者とは限らず、過去に好記録を出した選手が指名されることもある。競技の時だけでなく、合宿先で抜き打ちに調べられることも。
日本選手は、かつて風邪薬による陽性の例があっただけだが「マラソン王国・日本」が対象にされることは少なくない。
昨年のシカゴマラソンで3位となった渋井陽子さんも、検査を命じられた。
女性検査官の目の前で、ついたてすらなしで尿を出さねばならない。検査を終えた渋井さんは、「出にくいですよね」と、照れ笑いでもするしかない、といった表情で出てきた。
なんで他人におしっこの姿を見られなきゃいけないの……こんな屈辱ってない!
ドーピング検査は、68年のグルノーブル(仏)冬季五輪から始まった。だが、私が現役ランナーだった80年代までは、それほど厳しくはなかった。
それが、ドーピングを隠す薬が作られ、尿が売り買いされ、他人の尿や水で薄めた尿を出す選手が出てくる中で、検査は異常なほど厳しさを増している。
来年はアテネ五輪。発祥の地を、再生の出発点にしてほしい。
(朝日新聞/2003年7月12日掲載)
|